だ液によるがんリスク検査「サリバチェッカー」を提供する株式会社サリバテック(本社:山形県鶴岡市、代表取締役:砂村眞琴)は、当社代表の砂村が共著者として参加した、東京医科大学 消化器内科学分野(主任教授:糸井隆夫、筆頭著者:中尾充宏)の研究グループによる論文が、2026年10月22日に国際学術誌『Medical Sciences』に掲載されたことをお知らせいたします。
本研究では、だ液に含まれる「ポリアミン(注1)」という物質に着目し、ポリアミンの「濃度」そのものではなく、「比率」を機械学習(注2)で解析することで、胃がんの人とそうでない人を見分けられる可能性を示しました。なお、本研究は弊社サービス「サリバチェッカー」で用いられている機械学習モデルの精度を検証したものではありませんが、本研究の成果は今後の「サリバチェッカー」の改善に繋がると期待されます。
本研究のポイント
1. だ液の「濃い・薄い」に左右されにくい新しい指標
だ液は水分量によって濃さが変わるため、単純な物質の濃度のみを使用して胃がんの人と胃がんでない人を見分けようとした場合、水分量などの影響を受ける可能性があるという課題がありました。本研究では、各ポリアミンの「アセチル化体(注3)」と「非アセチル化体」の比率を使うことで、この影響を抑えられることを確認しました。
2. 胃がんの人とそうでない人を一定の精度で判別
複数の比率データを学習させた機械学習モデルは、学習に用いられていないテストデータにおいて、判別能を示す指標(AUC(注4))が0.807となりました。胃がんの人の約7割を「胃がんの可能性あり」(感度68.8%)、胃がんでない人の約7割を「可能性が低い」(特異度72.7%)と正しく判定しました。
3. 対象となった胃がん患者のほとんどが早期(ステージI)
今回の研究の対象となった胃がん患者53人のうち51人はステージI(注5)でした。症状が出にくい早い段階の胃がんでも、だ液に変化が表れている可能性を示す結果です。
(注1)ポリアミン:細胞が増えるときに必要な物質。スペルミン、スペルミジンなどがあり、正常な細胞と比較してがん細胞では量が変化することが知られている。
(注2)機械学習:データの特徴をコンピュータに学ばせ、判別や予測を行う人工知能(AI)の手法の一つ。本研究では「ロジスティック回帰」という手法を使用した。
(注3)アセチル化:物質にアセチル基が付くこと。がん細胞では、ポリアミンのアセチル化に関わる酵素の働きが変化すると報告されている。
(注4)AUC:判別のしやすさを示す指標。0〜1の値をとり、1に近いほど正確に見分けられることを示す(0.5は偶然と同じ)。
(注5)ステージI:がんの進行度を示す分類のうち、最も初期の段階。
研究の背景
胃がんは、日本で2021年に男性約7万人、女性約3万人が新たに診断された、身近ながんです。胃がんを見つける主な方法は内視鏡(胃カメラ)検査ですが、体への負担や費用、時間がかかります。また、血液で調べる腫瘍マーカー(CEA、CA19-9)は、がんがあっても陽性になる割合が2割程度と低く、早期発見の検査としては向いていません。
そこで、自宅でも負担なく採取できる「だ液」を使い、より手軽に胃がんに罹患している可能性を調べる方法が求められていました。ポリアミンは細胞が増えるときに必要な物質で、がん細胞では量が変化することが知られています。
研究の内容と結果
研究グループは、2020年3月から2025年5月に東京医科大学病院で内視鏡検査を受けた方のうち、胃がんの患者53人と、胃がんのない37人を対象に、検査当日の朝に採取しただ液を分析しました。
質量分析装置 (LC-MS)(注6)で9種類のポリアミンを測ったところ、すべてのポリアミンにおいて胃がん群の方が胃がんのない群と比較して濃度が高いという結果でした。ただし、だ液の濃さそのものの影響を受けやすく、ポリアミンの濃度を学習させた機械学習モデルでは、機械学習での学習時の判別精度と比較して、テストデータにおける精度が下がりました(AUC 0.688)。
一方、「アセチル化体」と「非アセチル化体」の比率を学習させた機械学習モデルは、だ液の濃さとの相関が小さく、テストデータでもAUC 0.807という結果を保ちました。だ液のように濃さが変わりやすい検体では、「比率」で見る方法が有効である可能性が示されました。
(注6)質量分析装置(LC-MS):液体の中の物質濃度を精密に測る分析機器。
今後の展望と本研究の課題
本研究は、だ液のポリアミン比率が胃がん検診を補う手段になり得るかを確かめた、初期段階の研究(概念実証研究)です。今後は複数の医療機関で、より多くの方を対象にした検証が必要です。
※本研究は、弊社サービス「サリバチェッカー」で用いられている機械学習モデルの精度を検証したものではありませんが、本研究の成果は今後の「サリバチェッカー」の改善に繋がると期待されます。
代表取締役社長 砂村眞琴 コメント
東京医科大学の先生方との共同研究の成果が国際学術誌に掲載されたことを、大変うれしく思います。本研究では、濃さが変わりやすいだ液でも、含まれる物質の「比率」に着目することで、胃がんの発生リスクを予測できる可能性が示されました。胃がんは、内視鏡検査で早期に発見できれば低侵襲治療が可能ながんですが、検診を受けていない方がまだ多いのが現状です。こうした課題を踏まえ、当社は今後もアカデミアとの連携を通じて、様々な疾患を対象とした臨床研究を進めてまいります。だ液で手軽にリスクを知ることが医療機関の受診につながる社会の実現を目指してまいります。
論文情報

URL:https://www.mdpi.com/2076-3271/14/7/695
本研究は、東京医科大学病院の倫理委員会の承認を得て、参加者全員の同意のもとで実施されました。
だ液によるがんリスク検査「サリバチェッカー」
「サリバチェッカー」は、だ液中の代謝物を分析し、AIで解析することでがん罹患リスクを評価する検査です。男性は膵がん・肺がん・胃がん・大腸がん・口腔がんの5種、女性はこれに乳がんを加えた6種のがんリスクを一度の検査で評価できます。慶應義塾大学先端生命科学研究所の研究成果をもとに開発されました。これまでに累計11万人以上にご利用いただいています。
サリバテックのミッション
スクリーニング検査事業により、疾病の早期発見と早期介入に寄与する
セルフケアと医療との橋渡し役として、人々の「いのち」と「からだ」を守る仕組みを社会に提案する
アカデミアと協調し、継続的な技術開発と臨床研究を進め、成果をいち早く社会に還元する
【サリバテック概要】
会社名:株式会社サリバテック
代表者名:代表取締役 砂村眞琴
事業内容
・だ液によるがんリスク検査事業
・新規リスク検査開発事業
・研究検査受託事業
コーポレートサイト: https://salivatech.co.jp/
サービスサイト: https://sc.salivatech.co.jp/
<お問い合わせ先>
株式会社サリバテック
E-mail:info@salivatech.co.jp