リリース発行企業:特定非営利活動法人なかよし学園プロジェクト
特定非営利活動法人なかよし学園プロジェクト(所在地:千葉県松戸市、代表:中村雄一)は、2026年10月26日、英国・ウィンザー城内のSt. George’s Houseで開催された「ICCC Windsor Consultation」において、代表・中村雄一が「Adaptive Peacebuilding through Education ― From Teaching the Future to Co-Creating the Future(教育を通じた適応的平和構築――未来を教えることから、未来を共につくることへ)」と題したスピーチを行いました。

中村雄一代表が発表したのは「教育を通じた適応的平和構築」だった。
中村にとってWindsorでの登壇は今回で4回目。今回提示したのは、世界11カ国と日本の学校・地域で積み重ねてきた教育・人道支援・平和構築の実践を、一つの教育的平和構築モデルとして整理した「Adaptive Peacebuilding through Education」です。
その出発点にあるのは、「国際協力を行う側が、現地の未来の答えを決めてよいのか」という問いです。
戦争、災害、貧困、避難、社会的分断。複雑な危機の中では、外部の専門家が事前に描いた「正解」が、そのまま現地で機能するとは限りません。だからこそ、なかよし学園は完成した答えを現地へ運ぶのではなく、その地域に暮らす人々が自ら考え、試し、他者の反応から学び、変化する状況に応じて次の行動を選び直していく力を育てることを重視してきました。
「We do not design peace for people.」
私たちは、人々のために平和を設計しない。
平和を外から完成させて届けるのではなく、人々自身が未来を考え、試し、つくり直すことのできる環境を共につくる。それが、中村が今回Windsorで提唱したAdaptive Peacebuildingの核心です。

Windsor城で4度目のスピーチを行なった中村雄一代表
■「誰が未来を設計するのか」――発表は一つの問いから始まった
中村の発表は、「Who gets to design the future? ――誰が未来を設計するのか」という問いから始まりました。
政府なのか。専門家なのか。NGOなのか。教師なのか。それとも、そこで暮らしている子どもたち自身なのか。

誰が未来を設計するのか?
従来の国際協力では、資金や専門知識を持つ外部の組織が計画を立て、現地の人々がその支援を受け取るという構造が少なくありません。しかし、中村が世界各地の現場で見てきたのは、危機の中に生きる人々は決して「何も知らない受益者」ではないという事実でした。
戦争を経験している人には、戦争の中で生きてきた知識があります。災害を経験した地域には、そこから立ち上がってきた経験があります。子どもにも、大人とは異なる視点があります。そして、地域の文化、歴史、人間関係を最も深く知っているのは、そこで暮らしている人々です。
だから外部から来る人間は「Expert=答えを持つ専門家」である前に、「Facilitator=考える場をつくる人」「Connector=人や知識をつなぐ人」「Resource Provider=必要な資源を提供する人」、そして「Learning Partner=共に学ぶ人」であるべきだと中村は提案しました。

NGOが介入することで学びの土壌を作る。共に学び合う場を作ることが支援につながる。
■「教える」から「一緒に学び続ける」へ――Adaptive Peacebuilding Education Cycle
今回、中村は世界各地で繰り返されてきた実践を、「Adaptive Peacebuilding Education Cycle」として整理しました。
そのプロセスは、INPUT(別の現実から学ぶ)、CREATE(考え、アイデアや教材、道具をつくる)、DELIVER(別の人や地域へ届け、実践する)、RETURN(反応や新しい知識を受け取る)、ADAPT(振り返り、次の行動を変える)という循環です。

Adaptive Peacebuilding Education Cycle
中心に置かれるのは「LOCAL AGENCY=地域の主体性」です。
教育者がこの循環の上に立って指示するのではなく、自らも循環の中に入り、一緒に学び続ける。つくったものがうまくいかなければ変える。現地から違う意見が返ってくれば、それを次の実践に取り入れる。
完成した一つの答えを世界へ広げるのではなく、「学び、つくり、届け、返ってきたものから学び直し、変える」プロセスそのものを、それぞれの地域に合わせて適応させていく。
それがAdaptive Peacebuilding through Educationです。

Adaptive Peacebuilding through Educationは教育をサイクルとして定義する。
■ウクライナで問いかけた「どんな街に住みたい?」――未来を想像する力を取り戻す
この理論を象徴する実践として、中村は2026年9月に戦争下のウクライナ・キーウとリビウで行った「未来のまちづくり」授業を紹介しました。
日本全国から寄贈されたNゲージ鉄道模型、子どもたちから集められたレゴ、ミニ四駆などを使い、子ども、保護者、退役軍人らに投げかけた問いは、「What kind of city do you want to live in? ――あなたは、どんな街に住みたいですか?」。

未来のまちづくり授業
未来のまちづくり授業
未来のまちづくり授業
子どもたちは家や学校、公園、病院、駅、道路、発電設備をつくりました。しかし、授業は模型を完成させることが目的ではありません。
「駅はどこにあれば、子どもが安全に学校へ行けるだろう」
「けがをした人をどうやって病院まで運ぶのか」
「停電しても街を動かせるか」
「高齢者や障害のある人も安全に移動できるだろうか」。
問いを加えるたびに、街は変わっていきます。他者が意見を出し、時には考えが食い違い、それを受けて線路を動かし、建物をつくり直す。壊れたものは直し、うまくいかなければ別の方法を試す。
戦争では、未来が自分たち以外のものによって決められていきます。ミサイル、ドローン、空襲警報によって日常が変わる中で、「自分たちはどんな未来に暮らしたいのか」を自分たちの手で考える。
中村は発表で、この実践を次のように位置付けました。
「Peace is not only ending the war. Peace is recovering the ability to imagine a future.」
平和とは、戦争が終わることだけではない。未来を想像する力を取り戻すことでもある。

未来のまちづくり授業はウクライナの子どもたちに未来を設計する力を育んだ
■支援は一方向ではなく、「学び」は他方向に広がる
なかよし学園が日本国内で展開してきた「世界とつながる学び」も、今回の理論を生み出した重要な実践です。
日本の子どもたちが海外について学ぶだけではありません。学んだことから教材や作品、アイデアをつくり、なかよし学園が海外の教室へ届ける。現地の子どもたちがそれを使い、自分たちなりに変え、新しい知識やメッセージを日本へ返す。そして日本の子どもたちが、再びそこから学びます。
山形県遊佐町の中学生が自分たちの町や郷土料理について伝えれば、ウクライナの生徒は自分たちの街や文化を動画にして日本へ返す。日本が防災を伝えれば、空襲や停電を経験してきたウクライナの子どもたちは、その経験を「ウクライナカルタ」という新しい教材に変えて日本へ届けようとする。

ウクライナの子どもたちが作成した戦争時の教訓を伝える「ウクライナかるた」
日本が教える。世界が学ぶ。それだけではありません。
世界が教え、日本が学ぶ。
なかよし学園は、この国境を越えた往還を「世界まなびあいプロジェクト」、学んだ人が次の誰かの先生となり、再び学ぶ側へと役割を変えていく仕組みを「教えあい・学びあいリレー」として実践しています。
Support moves one way. Learning moves both ways.
支援は一方向に動くことがあっても、学びは双方向に動く。
これは、援助する側と援助される側を固定しない国際協力への転換でもあります。

なかよし学園の「学び合い」モデル。
■「支援される人」が「支援する人」になる――ウクライナから熊本へ
発表では、その象徴的な事例として「Ukraine → Kumamoto」も紹介されました。
熊本地震からの復興経験を、熊本の教員がウクライナの子どもたちのための授業にしました。なかよし学園が現地を離れた後には、ウクライナの教員自身が授業を継続。さらに子どもたちは、日本に向けて「From Lviv, Ukraine, we wish you safety and happiness.(ウクライナ・リビウから、皆さんの安全と幸せを願っています)」というメッセージを送りました。
国際協力の中で「支援を受ける側」と見られていた子どもたちが、今度は日本を思い、応援する側になる。
Recipient(支援を受ける人)から、Knowledge Holder(知識を持つ人)へ。そしてSupporter(誰かを支える人)へ。
紛争や災害の影響を受けていることは、その人に知識や能力、主体性がないことを意味しません。危機の中にいる人を永遠に「守られる人」「助けられる人」という役割に固定しないことも、人間の尊厳を守る平和構築の重要な要素だと中村は考えています。

学び合いにより、ウクライナの生徒たちが日本の熊本を応援する形を作る。
■日本と世界11カ国の現場から、実践を「理論」へ
今回の発表は、机上で設計した理論を海外で試すものではありません。
なかよし学園は2007年の活動開始以来、日本をはじめ、カンボジア、ルワンダ、コンゴ民主共和国、ウガンダ、ネパール、南スーダン、東ティモール、シリア、ケニア、ウクライナなど、世界11カ国で教育・人道支援・平和構築活動を展開してきました。

シリアでの活動
カンボジアでの活動
南スーダンでの活動
コンゴ民主共和国での活動
カンボジアの地雷被害地域での教育、コンゴ民主共和国の火山災害後の防災教育、ルワンダでのジェノサイド後社会における教育活動、南スーダンや東ティモールでの学習支援、そして戦争下のウクライナ。日本国内では全国50校を超える学校や自治体、企業、福祉施設と連携し、教室で生まれた学びを世界の現場で実際に使い、その結果を日本へ戻してきました。
中村自身も、慶應義塾大学大学院でコンゴ民主共和国・ニーラゴンゴ火山噴火後に設立した防災学校の実践を研究し、危機下において地域内外の人材、知識、資源、信頼関係をどのように組み合わせ、新しい仕組みを生み出していくのかを考察してきました。

コンゴ北キヴ州ゴマでの活動
つまり、研究が先にあり現場を当てはめたのではなく、現場で何度も試し、失敗し、修正してきた実践の中から共通する構造を取り出し、研究によって問い直し、再び現場へ戻す。その往還から今回のAdaptive Peacebuilding through Educationは構築されています。
こうした教育実践は、第12回JACEイベントアワードでの評価や、2026年のEXPO FUTURES AWARD「平和と人権」部門グランプリなどにもつながりました。しかし、その評価の土台にあるのは、各地の学校、教員、児童生徒、地域住民、現地パートナーと地道に積み重ねてきた一つひとつの実践です。

国内外で大きな評価をいただいているなかよし学園の活動。(写真はEXPO FUTURES AWARD2026)
■ICCCが掲げた「地域のニーズに応じて、対話から行動へ」と重なる
今回のICCC Windsor Consultationは、「Imagine the Possible: Universal Design & Longevity Economy」をテーマに、政府、ビジネス、医療・リハビリテーション、テクノロジー、都市計画、建築、研究など、多様な分野の実践者が集まりました。
そのコンセプトで重視されたのは、年齢や能力にかかわらず人々が自立し、参加し、より良く生きられる社会をどのようにつくるかという問いです。そして、対話だけで終わらず、それぞれの地域のニーズに応じた実践へ進むこと、多様な分野をつなぎ、具体的な解決への道筋をつくることが掲げられました。
これは、中村が世界の現場で積み上げてきたAdaptive Peacebuildingと強く重なります。
ウクライナの「未来のまちづくり」で、高齢者や障害のある人が移動できるか、停電時にも機能するか、学校や病院へ安全に行けるかを子どもたち自身が考えたこと。日本でつくられた教材をそのまま完成品として届けるのではなく、現地で使われ、修正され、再び日本へ返してきたこと。そして、外部の専門家ではなく、その場所で暮らす人を「未来の設計者」として位置付けてきたこと。
I CCCが問いかけるUniversal Designを、なかよし学園は建物や設備の設計だけでなく、「誰が社会づくりに参加できるのか」という教育と主体性の問題として捉え直しました。
Not the same solution everywhere.
The same learning process, adapted everywhere.
世界のどこでも同じ答えを使うのではなく、それぞれの地域が自分たちの答えをつくり続けられる学習プロセスを共有する。そこに今回のWindsor発表の大きな意味があります。

答えを一方的に教える活動ではなく、答えを生み出す環境を設計する。

Windsor城での発表を行なったなかよし学園中村雄一代表、中村里英事務局長
■Adaptive Peacebuildingを「人間の安全保障」へ
中村が今回、さらに踏み込んだのがHuman Security(人間の安全保障)との接続です。
戦争や災害から人を守ることは不可欠です。しかし、人間の安全保障を「危険から保護されている状態」だけで終わらせるのではなく、人が尊厳を持ち、社会に参加し、他者と協働し、自分たちの未来に働きかけることのできる力まで含めて考えられないか。
中村はその鍵となる概念を「Adaptive Capacity=適応する力」としました。
現実が変わったときに、学び、状況を判断し、行動を変えることのできる力です。
Learning(学ぶ)からParticipation(参加)へ、Co-Creation(共創)へ、Feedback(反応)を受け、Adaptation(適応)を重ねる。その循環によってAgency=主体性とAdaptive Capacity=適応する力が育まれ、それが人間の安全保障を支えるのではないか。

Adaptive Peacebuildingを「人間の安全保障」へ
これは今回、完成した因果理論として発表されたものではありません。中村は、世界各地で確認してきたObserved Practice(実際に起きたこと)からEmerging Pattern(繰り返し見えてきた構造)を抽出し、Practice-Informed Conceptual Model(実践に基づく概念モデル)として提示しました。
今後は研究、測定、地域間比較、検証を重ねていく必要があります。
「答えを決めない」というAdaptive Peacebuildingの姿勢は、その理論そのものにも貫かれています。

答えを現地の人々と共に見つけていく。それがなかよし学園の新しい国際協力の形となる。
■なかよし学園代表・中村雄一 コメント
僕は世界の現場に行くたびに、自分はそこでは“外から来た人間”だということを忘れないようにしています。ウクライナの未来も、ルワンダの未来も、カンボジアの未来も、僕が決めるものではありません。
国際協力というと、困っている人に何をしてあげられるかを考えがちです。でも現場には、その土地で生きてきた人たちの知識も経験も文化もあります。だから必要なのは、こちらが正解を持っていくことではなく、一緒に考え、試して、失敗して、学び直して、次の方法をつくれる関係だと思っています。
支援が一方向に動くことはあります。でも、学びまで一方向である必要はありません。日本の子どもがウクライナに教える日があれば、ウクライナの子どもから日本が学ぶ日もある。昨日教わった子が、今日は先生になる。支援されていた人が、今度は誰かを励ます人になる。そうやって役割が変わる瞬間を、僕たちは世界中で何度も見てきました。
人間の安全保障は、人を危険から守ることだけでは完成しないと思います。その人が、自分の未来に参加できること。仲間と未来を考え、状況が変わればもう一度つくり直せること。その力を教育によって育てられるのではないか。それが今回Windsorで伝えたかったことです。
僕たちは未来を教えません。未来を一緒につくる力を育てます。今回の発表も完成した答えではありません。世界の仲間たちと実践し、学び、変えながら、この理論そのものも育てていきたいと思います。

なかよし学園はこれからも世界の片隅の平和を実現していく。Windsor城にて。
■ICCC Windsor Consultationについて
International Council for Caring Communities(ICCC)が主催する国際対話の場。2026年10月26日から28日まで、英国・ウィンザー城内のSt. George’s Houseで「Imagine the Possible: Universal Design & Longevity Economy ― Strategies & Solutions - Partnerships in Practice」をテーマに開催されました。国連2030アジェンダおよびNew Urban Agendaを背景に、政府、ビジネス、医療・リハビリテーション、テクノロジー、都市計画、建築、研究など多様な分野の関係者が参加し、包摂的な地域社会、社会参加、ウェルビーイング、持続可能な社会づくりなどについて議論しました。
■特定非営利活動法人なかよし学園プロジェクトについて
2007年活動開始、2019年NPO法人化。教育を軸に、紛争、災害、貧困などの影響を受ける地域で、学習支援、平和教育、防災教育、職業教育、国際交流などを実施しています。現在、日本を含む世界11カ国で活動。国内では全国の学校、自治体、企業、福祉施設等と連携し、「世界とつながる学び」「世界まなびあいプロジェクト」などを通じて、日本の子どもたちの学びを海外で実践し、海外から得た知識や経験を再び日本の教育へ戻す双方向型の学習モデルを展開しています。
■本件に関するお問い合わせ先
特定非営利活動法人なかよし学園プロジェクト
E-mail:peace.office@nakayoshigakuen.org
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掲載時の写真クレジット:(C)なかよし学園プロジェクト