提供:Rethink Creator PROJECT 制作:山形経済新聞編集部
「地元を誰かにまかせない」をテーマに、「クリエイターの地産地消」により地域創生の実現を目指す「Rethink Creator PROJECT(リシンク クリエイター プロジェクト)」山形セミナーが8月24日、やまがたクリエイティブシティセンターQ1(キューイチ)で開催されました。
それぞれの「地域」「文化」「暮らし」ならではの魅力を、地元の人が発見・発信していくことで、持続可能な地方活性化の一助となることを目指している「Rethink Creator PROJECT」。Rethinkとは、「視点を変えて考えること」を指し、それを形にして世の中に発信できる「Rethink Creator」を日本中に創出していくプロジェクトです。
主催は、プラットフォーム事業「thinc」をはじめ、広告制作やサイト運用事業を手掛ける株式会社クリエイターズマッチ(東京都渋谷区)。本セミナーは2018(平成30)年からJT(東京都港区)が推進する地域社会への貢献活動「Rethink PROJECT」の一環で行われ、2023年は全国11地域で開催予定です。今回はコンセプトに賛同した山形市と山形商工会議所が後援し、山形市では初開催となりました。山形県での開催は、2019年8月の南陽セミナー以来2回目です。
今回の山形セミナーの講師には、東京都や仙台市のWEB制作会社でのデザイン業務を経て2017(平成29)年からフリーランスとして活躍するクリエイターの大久僚一さんと、東北芸術工科大学出身でデザイン山形代表の広告デザイナー・菅野重人さんが登壇しました。参加者は32名。10代~50代まで年齢層は幅広く、会社員や公務員、フリーランス、学生などさまざまで、セミナー後のアンケートによると、クリエイティブ経験がない参加者も3割と少なくありませんでした。会場は、山形市立第一小学校旧校舎を利用した、やまがたクリエイティブシティセンターQ1で行われました。
セミナーは、前半30分が座学「Rethink講座」、後半90分がキャッチコピーを考える「Createワークショップ」で構成されています。「Rethink講座」では、地域や身近な暮らしから魅力を発見するための視点の変え方を学びました。その際に大切なのは「属性を見る(FILTER)」、「内側を見る(INSIGHT)」「印象を見る(CAPTA)」の3点とし、山形市の「やまがた舞子」を例に挙げるなどしながら、わかりやすく解説していきました。
会場となったQ1のホームページでセミナーの開催を知り参加したという、WEBディレクターの佐藤卓真さんは、「仕事のほかにも、SNSなどで山形の情報発信をしています。発信を、誰に、何のために、どのようなことをすると良いのか、考え方を事例も交えて教えてもらい、良い機会になりました」と前半の「Rethink講座」を振り返り、感想を話してくれました。
山形に関する写真などを使いながら説明
後半は5つのグループに分かれ、蔵王温泉スキー場の雪原に並ぶ「樹氷」と、山形市が発祥の「冷たいラーメン」をテーマにキャッチコピーを作成する「Createワークショップ」が行われました。A~Cグループが樹氷を、D・Eグループが冷たいラーメンを担当し、まずはフィルター(キャッチコピーを伝えたい相手)の検討からスタートしました。
「伝えたい『相手』や『物事』を決めて探していくことで、特定の誰かが知りたいことや今まで気づかなかった魅力が見えていく」と教わったことを踏まえ、年齢や性別だけではなく、職業や性格、グループによっては名前まで設定を考えていました。参加者の中には、実在する自身の親戚や知人を挙げている人もいました。各グループが考えたフィルターは以下の通りです。
男性・25歳・IT企業勤務・横浜在住
樹氷を見たことがない。仕事が忙しく、別な場所に行きたいと考えている。
台湾からの観光客・20代のカップル
雪を見たことがない独身男性(彼女持ち 結婚間近)
まじめな性格・IT企業勤務・台湾出身・日本語は上手
年収800万・仕事のために来日し、関東の田舎に住んでいる
ラーメン好きだが、保守的な40代女性の井田さん
決定権が母にあり、子供がいるファミリー
グループワークの様子
フィルターを設定した後、各テーマの写真から考えられるカプタ情報をグループで話し合いました。カプタとは、個人が思った感想や考えられるストーリーなどの自由でやわらかく、解釈がさまざまな情報単位のことです。「数値や位置などのデータ情報が溢れている時代だからこそ、カプタ情報を意識することで、コピーの種になるような印象を伝える言葉が見つかる」と、前半の座学で講師の大久さんが解説してくれました。写真を見た時の第一印象から考えたり、インスタグラムのハッシュタグをつけるノリで考えたり、会話文にしたり、感情やオノマトペで表現したり、年代や職業がバラバラな受講生同士が話し合うことで、それぞれ刺激になっているようでした。
意見交換をする受講生
その後は、いよいよコピーの制作に移りました。まずは、各自が考えたコピーをグループ内で発表しましたが、発表のたびに自分にはない視点や発想をお互いが感じていたようです。最終的には、1グループにつき1コピーに絞って発表しなければなりませんでしたが、なかなか決められないグループも多く、時間が延長されるほどでした。
各グループから提案されたコピーを大久さんと菅野さんが講評し、さらに各テーマ1案ずつ選出しました。樹氷のコピーに選ばれたのはBグループの「また来よう、白い童話の世界」、冷たいラーメンのコピーに選ばれたのはEグループの「外38°C、口(くち)-5°C」でした。
そのコピーをもとに、菅野さんが写真と組み合わせてデザインをし、ポスターを仕上げていきました。その様子は、会場のスクリーンに投影。文字の大きさや配置を変えたり、影などの効果を加えたり、ときには写真を加工したりするなどしながら、少しずつ洗練されていく様子に、参加者は驚きの声をあげていました。また、「文字の配置を変えたらどうか」、「漢字をひらがなにした方がわかりやすいのではないか」といった意見も積極的に出され、会場は盛り上がりを見せました。
会場でデザインを組んでいく菅野さん
そのほかのコピーについても、後日、デザインが組まれ、同プロジェクトのSNSで公開されています。
セミナー終了後、「外38°C、口(くち)-5°C」のコピーを提案したEグループの佐藤雄さんは「ホテルに勤めていて、地域や観光を盛り上げたいと思い参加しました。また、いつも会っている同業種の人とは違う視点を持った方の考え方を知れるのではないかという期待もありました。グループワークでは、同じグループのみなさんの発想がすごく面白くて刺激になりました。」と話します。また、その場でクリエイターがデザインする様子を見て「自分が提案したコピーがデザインとして形になって表現されていくのは、とても興奮しました。今後も『誰に』、『何を』をもっと深掘りして言葉にのせていきたいです。観光業の盛り上げにつなげていければと思います」と笑顔で話してくれました。
講師を務めた大久僚一さん(右)と菅野重人さん
私は仙台の教育機関でウェブデザインを教えています。山形から通われている方もいて、その人たちには「ウェブをとおして地域を盛り上げるために学びたい!」と考えている人たちが多いと、常々思っていました。今日のセミナーも、参加者のみなさんが活発に発言されていて、山形には自発的に地域をデザインして活性化していきたいと思っている人たちが多いのだと、改めて感じたところです。
今日は、いろいろなキャッチコピーを出していただきましたが、冷たいラーメンをテーマにした「外38°C、口(くち)-5°C」は、気温や温度である「データ情報」と、自由でやわらかい「カプタ情報」を両立していて、率直に素晴らしいと思いました。
今回のセミナーで、デザインは誰でもできるものだと実感していただいたかと思います。興味をもった方には、ぜひ、独学でも、誰かに教わるでもよいので、デザインを始めてもらえれば。自分の表現の幅を広げて生活していただけるとうれしいですね。
今日のセミナーは、自分にとっても良い学びにつながりました。「Rethink」の考え方についても、漠然と自分の中で考えていたことが、明確化されて整理できました。参加者のみなさんはとても熱心な方が多くて、ワークショップでは話しかける隙もないほどに議論が盛り上がっていたように思います。さまざまなコピーが出されましたが、自分の考えにはないものも多かったです。新鮮でしたし、改めて言葉の力のすごさを感じました。
山形は、まだまだデザインをする場が少ないように感じます。参加者のみなさんには、今日の経験を活かしながら山形にデザインを広めてもらえればと思います。
提供を行ったJT山形支社の墨谷健二さん
今日は前半の講義で教わった内容を踏まえ、後半のワークショップでは活発に意見交換されていて、とても盛り上がっていました。私は県外の出身で、だからこそ山形の魅力を感じている一人だと思いますが、地元の方が視点を変えて地域を見ることで、隠れている魅力を発見できることもあります。今日は、若い参加者もたくさんいましたが、ぜひ、教わったことを活用しながら山形の魅力発信の機会を増やしてもらえるとありがたいです。
主催のクリエイターズマッチ・大友湧矢さん
今日の参加者のみなさんは、クリエイティブに対する意識が圧倒的に高いように感じました。他の地域の場合、コピーにこだわったりするのですが、山形セミナーではコピーをどのように見せるのかについてこだわる方が多かったです。会場となったQ1のように、昔あったものをリノベーションするという観点が山形市は進んでいるとも思います。そのように、身の回りにクリエイティブが多く存在しているからこそ、見せ方への工夫を考えられる人が、他の地域に比べて多いのかもしれません。ワークショップ後には、「Rethink Creator PROJECT」のご案内もしましたが、それだけではなく、SNSでの発信とか、広告物の制作とか、身の回りのデザインにチャレンジしていただき、今日学んだことを活用してもらえればと思います。
「Rethink Creator PROJECT」では、誰でも参加できる「Rethink Creative Contest(リシンク クリエイティブ コンテスト)」を開催します。デザイン経験がなくてもチャレンジできる、アイデアを重視したコンテストです。今回のワークショップのように、自分の地元について、見方を変えて魅力的に伝えることがテーマで、審査のポイントは、「着眼点がおもしろいか」、「『Rethink=視点を変えて考えること』ができているか」、「伝わりやすいデザインになっているか」の3点です。募集締切は10月13日。地域の魅力クリエイティブの力で伝えてみませんか。詳細はホームページをご確認ください。