山形市内で飲食店経営や食品販売を手がける「傑作屋」代表の渡辺大輔さんが4月27日、書籍「さよならデパート」(スコップ出版)を刊行した。
2020年1月に破産した老舗デパート「大沼」を中心に、山形市中心市街地の百貨店やスーパーの歴史をたどる同書籍。渡辺さんはこれまで、山形初のキャバレー「ソシュウ」の物語をまとめた「キャバレーに花束を」、山形市小姓町の遊郭で起こった放火事件を題材にしたミステリー小説「この街は彼が燃やした」を執筆している。
渡辺さんは「私の会社もかつて大沼の取引先の一つだった。当時は大沼について詳しく知らなかったが、報道などで320年の歴史があることを改めて知り、調べていくうちに愛着が生まれていった。破産という終わり方ばかりが注目されてしまうが、また違った視点を得ていただけたら」と話す。
大沼の元社員、ライバル店の関係者や近隣住民などへの取材を重ねたという。大沼だけでなく、「山形松坂屋」「みつます」「十字屋山形店」「山形ビブレ」などにも触れ、山形の商業史を振り返る内容となっている。
渡辺さんは「大沼のストーリーは、仲間だった店がライバルになっていくなど、フィクションよりも波瀾(はらん)万丈だと思う。中心市街地の歴史というと堅苦しく感じるかもしれないが、まずはドラマチックな読み物として接していただきたい」と話す。
「この本が、自分たちの街に愛着を持つきっかけになればうれしい。出版したことで、大沼や中心市街地について、新たな情報も寄せられている。いろいろな方の思い入れをお聞きして、まとめていければ」とも。
B6判304ページ。価格は1,980円。