山形県の伝統産業「打刃物」を作り続けて約60年の「鈴木打刃物製作所」(山形市落合町)で、商売をする人のための特殊な刃物が製造されている。
鉄と鋼(はがね)を合わせた1枚の板(左)から、「たたき」と「磨き」の作業だけで形を作る
ニラを切るための「ニラ切り用鎌」や梨の木の接ぎ木をするための「ナイフ」、病気になった木の皮を削り取るための「刃」、里芋や柿の皮をむくための「皮むき専用包丁」など、一般の人にはなじみのない特殊な刃物を数多く手掛けるのは、2代目の鈴木司さん。全国の農家や食品加工場などからの注文に応え、切るものの形状に合わせた特殊な刃物を1年間に2000丁以上作るという。
鉄と鋼を合わせた1枚の板から、たたいて刃物の形を成形する「鍛造(たんぞう)」を得意とし、複雑な刃物の曲線を「たたき」と「磨き」の作業だけで仕上げていく。現在この技を受け継ぐ職人は日本でもごくわずかとなり、鈴木さんは「特注品は普通の鎌に比べ手間暇のかかる仕事だが、自分にしかできないものと思い、どうにかして作らねばと製作に臨んでいる」と明かす。
先代が2年の歳月をかけて完成させた、「ニンニク根切り用刃」は、工房に伝わる「秘伝の技」として鈴木さんが受け継ぎ技術を継承し続けている。
「大変なこともあるが、今後も必要としてくれている人がいる限り作り続けたい」と鈴木さん。全国の刃物を待っている商売人のために、今日も鉄をたたき続ける。